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事業再生に不向きな企業

事業に独自性がない企業や仕入れの確保がむずかしい企業は再生支援先として不向きである

経営不振に陥った企業がすべて金融機関の再生支援対象となるのではない。特に中小企業においては、その事業自体が疲弊・衰退し、ジリ貧状態に陥っている場合も多く、そうなると仮に金融機関が返済猶予や金利減免など単純な金融支援を行っても効果が出ない。再生支援にあたっては、抜本的な経営再建計画を策定のうえ、それに則した実のある支援策を講ずる必要があるが、支援するに足る企業であるかどうかは、事前に十分吟味しなければならない。再生支援要請が企業の単なる延命目的でしかない場合は、協力できないことになる。通常、次のような企業は再生支援先として不向きと考えられる。

①事業に独自性が乏しく、容易に第三者で代替されるような事業者
事業内容に特色がなく、経営ノウハウや独自の顧客基盤等を有しない企業は、第三者が簡単にその事業を代替できるので、企業としての存在価値は低い。このような場合は、事業を第三者に譲渡したうえで、企業自体は優勝劣敗の法則によりマーケットから退場することが相当であろう。不動産賃貸、宅地造成、個人飲食業等の業種は、一般的にこのケースに該当する。

②事業の成長性が乏しく、事業基盤の弱い企業
このような企業の場合、再建の事業計画は縮小均衡型となり、将来のキャッシュフローの獲得見通しも弱気となって、再生機会が遠のくことになる。

③適正な財産評定が困難で、関係者の信用が得られがたい企業
粉飾決算等により財務の実態把握が困難な企業は、仕入先、販売先、取引金融機関等の信用が得られがたく、その支援協力も期待できない。

④仕入れの確保がむずかしい企業
仕入れは企業の営業活動の源であるが、仕入先から信用が得られず、仕入業務が円滑に進まない企業は、早晩営業停止に追い込まれることになる。

⑤経営者の再生意欲が乏しい企業
企業再生の主体は経営者自身であるから、経営者の再生意欲が希薄ならば再生は覚束ない。

⑥経営者の不誠実と信頼感の欠如
経営者の経営姿勢に問題があり不誠実な態度が見受けられるような場合は、ステークホルダーの信頼感が薄れ支援協力は得られがたい。  

再生支援対象企業選定の六則

支援効果の大きい先から優先順位をつけ取り組む

企業の再生に対する支援は、大型企業の再建にかかわる大手行のみならず、地域金融機関においても地域経済の早期浮揚と金融機関自身の貸出資産の良化・拡充のため、その積極的な取組みが求められ、さらに、金融円滑化法制定に伴い、金融検査マニュアルに「金融円滑化編チェックリスト」が設けられて以来、企業再生支援は行政面からも強く要請されることとなった。ただし、経営不振企業がすべて再生支援の対象となるかというと、そうではない。金融機関の人的・資金的な支援能力にはおのずから限度があり、また費用対効果を勘案すると総花的なバラ撒き支援は避けるべきである。それゆえ、支援対象企業をある程度絞り込み、支援効果の大きい先から優先順位をつけて取り組むことになる。支援先選定のポイントは、おおむね以下の六点に要約できよう。

①対象企業の事業に存立基盤があること
再生の柱となるべき事業に今後相当の収益獲得期待や成長性があることを検証する。

②実現可能な計画や施策の策定見込みがあること
現状の問題点を克服し再生につなげる経営再建計画は「絵に描いた餅」であってはならず、実現可能な具体的施策を伴ったものである必要がある。

③経営改善・再建に対する経営者の意欲と資質が十分なこと
特に中小企業においては、経営者の意欲と計画を実現していく手腕が再生のための必須の要件である。

④株主、取引先、従業員など関係者の協力が得られること
企業再生は、関係者に対しても相応の不利益の負担を求める結果となるので、「痛みの共有」ができることが必要である。

⑤企業に対する金融機関の発言力があること
企業に金融機関側の支援の意図や考え方が正しく理解されないと、再生支援は成功しない。それには、企業経営者に対する金融機関の発言力が確保されている必要がある。

⑥金融機関側にも支援の大義名分があること
再生支援により目先の不利益負担は生ずるが将来的にはそれを補うだけのメリットが期待できるなど、金融機関にとっても大義名分が必要である。

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