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コベナンツとは

活用範囲の拡大には、借り手側のメリットにひと工夫が必要

コベナンツとは、本来、「誓約」あるいは「約因」と訳出され、契約の根本を成す約束事を意味する。聖書における「聖約」の意味もあり、契約社会である英米の契約書においてはcovenant clauseが設けられ、契約当事者がそれぞれ契約義務の履行を誓約する形式をとることが通常である。金融機関と惜入人との間のLoan Agreementにもそれが設けられており、借入人による当該条項違反は期限の利益喪失事由となること、および金融機関が条項違反を犯した場合には相手方に発生した損害を賠償する義務を負うこと等が規定されているのが一般的である。この点は、双務契約方式をとるLoan Agreementにおいては当然のことといえる。日本においても、担保に頼らない融資を推進するツールとして、この数年間でコベナンツを活用する動きが活発化してきた。

ただし、コベナンツを「財務制限条項」と訳出していることからもわかるとおり、その定義は「特定の財務指標を一定の数値以上に維持することを予め約定し、当該約定に違反した場合には、期限の利益を喪失させたり、融資条件の見直しを行ったりすることができる特約条項」である(平成一六年二月二〇日付・社団法人第二地方銀行協会「中小企業金融におけるデット・デット・スワップおよびコベナンツの活用」)。コベナンツは、融資実行後のモニタリングを徹底させ、不良債権の発生防止・抑制に備えるための有効な手段とされ、すでにシンジケートローンやコミットメントライン等で多く用いられている。今後は中小企業金融の分野にも積極的に活用を図るべきとする意見が多いが、そのためには借り手側の動機づけ(メリット)に少し工夫をこらす必要があろう。

日本の融資契約は英米と異なり借り手側から金融機関への差入書方式が一般的であり、コベナンツの不履行がもっぱら借り手側の不利益となるおそれがあるからである。また、「契約」に対する履行義務観念の薄い日本企業に対して一方的にコペナンツを押し付けても効果の程は疑わしい。その違反を直ちに期限の利益喪失とするのではなく、状況に応じて、違反事由の解消策や融資条件見直しを協議するなど、弾力的な対応が求められよう。また、コベナンツを遵守すればより有利な条件の融資取引への移行が可能であること、借換えの審査手続がスムーズに進むことなどをメリットとして用意することで、借り手側の理解を得やすくすることも必要であろう。

改正された破産手続への対応

債権者にも積極的な参加姿勢が求められている

改正破産法が施行され、破産手続の迅速化、合理化、簡便化が図られているが、債権者たる金融機関にもその影響がいくつか考えられる。たとえば事件の管轄面では、大型破産事件や関係会社等の事件につき、地元地方裁判所以外の裁判所が管轄できることになった。この点は破産者にとっては好都合であろうが、債権者側は不便を強いられる局面が多いだろう。何よりも大きな点は、従前の破産手続では債権者は原則的に裁判所や破産管財人からの通知を受けて対応する姿勢でよかったが、改正後の手続では債権者側の積極的な対応が期待されていることである。破産債権の届出に関しては、債権届出期間が定められないことがあり、その場合には、放置しておくと破産者が作成した債権表がそのまま認められることになるので、金融機関としてはこのような場合でも、原則として債権届出をしておくべきである。これによって時効の中断をすることもできる。

また、破産債権の期間内届出を失念した場合、従来は最後配当の除斥期間までは事実上追加届出が可能であったが、今後は一般調査期間経過前までに追加届出をしなければ、原則として失権するので注意しなければならない。担保権は別除権であるが、従前は担保権を行使しても回収できない額(予定不足額)を確定できない限り、別除権者は破産配当手続から除外されていた。破産の最後配当時までに担保処分が完了していなければ破産配当にあずかれなかったのであるが、それは不合理だということで、改正後は根抵当権極度額を超える部分の債権額を配当対象と認め、さらに担保権者と破産管財人が別除権の価額につき合意した場合は、予定不足額が確定したものとしてその部分の配当参加ができることになった。

一方、管財人は担保権の目的財産が破産財団の増加に寄与しないと考えるときにはそれを手続から除外できるので、担保権者がいたずらに担保処分に時間を掛けていると、その前に破産手続が終結してしまう事態が起こる。もちろん配当は受け取れない。したがって、タイムリーに担保権目的財産の処分につき管財人と交渉し、予定不足額を確定させたり換金処分の実現を図ったりすることを考えるべきであろう。このほか担保処分については、破産管財人による担保権消滅請求の制度が新設されている。駆込担保の否認等も規定が整備されたが、新たな救済融資に係る担保取得は否認の対象外となった。

個人破産

改正破産法のもとでは、個人破産手続が利用しやすくなっている

破産は典型的な法的債務清算手続であり、平成一七年一月に改正破産法が施行されて以降、その利用はますます増加傾向にある。支払不能に陥った債務者の負債を整理するため、破産管財人が債務者(破産者)の所有財産を換金処分し、処分代金を債権者に公平に分配して負債整理に決着をつける破産手続は、債務者のみならず、担保外資産からの公平な回収が可能となる点で債権者にとっても有益なものといえる。改正後の破産手続で特徴的なことの一つは、個人破産手続の目的が、単に破産者の負債を整理するというだけでなく、個人破産者の経済的再生をバックアップするという視点が加えられたことである。

たとえば、破産者の経済的再生を支援するために手元資金のうち九九万円までは自由財産とされ、管財人の財産処分の対象(破産財団)から外された。また、自由財産の範囲が生活必需品に狭く限定されずに、裁判所の判断で拡張できることになった。個人破産の場合は、たとえ破産手続が終結しても、別途免責手続を経なければ旧債務の支払義務が残り、旧破産法のもとでは、破産終結後免責申立てまでの間に破産者が手続開始後に得た収入を債権者が差し押えるという事態も発生したが、改正手続では破産申立てと同時に免責申立てがなされたものとみなされるので、その後免責不許可とならない限り、そのような心配はなくなった。このように個人破産手続の使い勝手がよくなると、個人再生手続よりも有利となる面もある。

個人再生手続においては原則的に三年間で一〇〇万円の再生弁済が必要なので、経済的窮境に陥った個人にとっては相当重い負担となり、破産者というレッテルを厭わなければ、個人破産手続でフレッシュスタートを切ったほうが、生活の立直しには有利な面もある。個人破産者の財産が僅少で一般債権者への配当財源がないとみられる場合は、破産手続開始決定と同時に手続の廃止決定(同時廃止)が行われるが、多少の財産があり少額の配当が可能である場合でも、直ちに開始決定をせず、裁判所が後見して破産手続申立代理人弁護士に手続外で換金・配当手続を行わせ、結果的に破産財団をゼロとしたうえで同時廃止を行うという、便宜的運用も一部では行われている。個人向け融資はいまや金融機関業務の中心となっており、その結果個人破産手続への適切な対応が求められている。

民事再生計画案の検討

計画案に対する金融機関の評価は他の債権者等の判断に重要な影響を及ぼす

民事再生手続は、平成一二年四月の施行以来毎年多数の申立てが行われ、中小企業を中心とした法的再建手続の主流としての地位を確保している。民事再生手続の特色は使い勝手がよいことにある。不正・不実なものでない限り、支払不能に陥る前の段階から申立てができ、短期間で手続の開始決定が行われる。再生計画案は六ヵ月程度で作成しなければならないが、債権者の過半数の賛成が得られると再生計画が認可決定され実行に移される。申立てから認可決定までおおむね一年以内という速さである。このように便利な再生手続であるが、一方で、手続の進行スピードについていけない債務者は脱落を余儀なくされ、中立件数の四分の一は再生に失敗しているというデータもある。

このような状況から、再生計画案には拙速で詰めが不十分なものが多く、なかには単に企業の延命を図るだけとしかいえないシロモノもある。経営者のなかには、引き続き経営権を維持しながら法的に債務免除をしてもらえるありかたい法律という程度の認識の者も結構多く、大口債権者である金融機関としては計画案の妥当性を厳しく検証する必要がある。民事再生手続は当事者主義が原則であり、過半数の債権者と債務者が合意した再生計画については、裁判所は計画自体の当否の判断をせずに認可決定を下す。したがって、債権者たる金融機関の計画案に対する評価は、計画達成の可能性を見通すうえで重要な意味をもつのである。再生計画案の妥当性を検討する際のポイントをいくつかあげよう。

①再生のための具体的な施策が講じられているか。
数字合せの計画は無意味であり、再生策の裏付けを検証する。

②財務内容や経営上の問題点が明らかにされ、その対策が施されているか。
経営破綻の原因解明と対策がなければ、再び行き詰まることが予想される。

③債権カット額や再生計画期間は合理的に決定されているか。
債権カット額と計画期間は表裏の関係にあるので、その点を検証する。

④債権カット部分の直接償却は可能か。
金融機関債権は通常は別除権付債権であり、別除権不足額が確定しなければ、債権カット額の直接償却ができない。別除権協定締結等を交渉すべきである。

⑤私財の提供、減資など、経営者の責任の果たし方は十分か。

⑥主要債権者の態度等からみて計画案の可決見通しはあるか。

貸出債権の譲渡

貸出債権の譲渡が常態化しても債権回収業務の重要性が減ずることはない

融資の回収は金融機関業務のなかでも中核業務であるが、最近は回収の終わっていない貸出債権(主として延滞債権)を外部サービサーなどの業者に譲渡し、金融機関の資産勘定から切り離すケースも目立っている。不良債権早期処理のニーズから、金融機関が不良債権比率を圧縮するためにそのオフバランス化を図った結果といえる。これら貸出債権の譲渡は、サービサーという債権回収業者を主な譲渡先として、不良債権の一括譲渡(バルクセール)という形で進められることが多い。債権譲渡に際しては、買い手であるサービサー等が譲渡対象の貸出債権の値付けを行い(この手続をデューデリジェンスという)、売り手である金融機関側が了解すれば、その価額で債権が譲渡(売却)される。

譲渡価額は、債権の将来キャッシュフローを現在価値に引き直すため、表面債権額から大幅に割り引かれたものになる。債権額(金融機関の帳簿価額)と譲渡価額の差額は金融機関側の譲渡損失として処理される。バルクセールを主体とした債権譲渡は、不良債権の早期オフバランス化という時代の要請に応えるためにやむをえず実行されたものといえるが、今後とも貸出債権の外部への譲渡は継続するとみられる。新たに発生する不良債権の処理に加えて、破綻懸念先債権や要管理先債権の一部も譲渡の対象となりつつあるが、これら不採算の貸出債権をいたずらに長期間資産計上しておくことは、資金の効率的運用が重視される金融機関経営にとってマイナスであり、譲渡損失(割引額)を勘案しても売却したほうが有利との経営判断が働くからである。

つまり、不良債権等の回収処理も時間との勝負になってきたといえる。しかし債権譲渡が常態化したとしても、金融機関の債権回収業務の重要性が減少することにはならない。「融資=回収」といわれるほど債権回収は金融機関の融資業務の必要不可欠な部分であり、不良債権といえども金融機関自身で回収することが本筋である。長時間をかけても回収のメドが立ちがたいものは除いて、相応の期間で回収ができるものであれば、多額の譲渡損失を負担してまで外部へ売却処分する必要はないのである。

債権回収交渉のポイント

毅然と、冷静に、かつ相手の人柄を斟酌して行う

融資が延滞した場合や融資先が倒産した場合には、問をおかずに融資の返済交渉を開始する。状況を調べることも重要であるが、それに時間を掛け過ぎて、交渉のタイミングを失することのないよう心掛ける。債務者あるいは保証人には常識外の考えの持主も結構多いもので、なかには質のよくない人物もいる。そのような場合、交渉は当然難航し当事者としては頭を悩ますことになる。しかし、融資を実行した金融機関側に非難されるべき落ち度がない限り、「貸したカネを返せ」ということを毅然と主張すべきである。金融機関職員の口癖である「申し訳ありませんが」という枕言葉は禁句であり、自信のない物言いは相手に付け込まれる危険がある。ただし、金融機関職員としての誠実な応対は忘れてはならない。以下に、債権回収交渉における留意点をいくつかあげる。

①冷静に、平常心を失わないこと
債務者との会話のポイントは、返済財源の有無の確認と返済の実現性の把握である。感情的にならず冷静に話を進める。

②Win-Win・ネゴシエーション
交渉では、相手を話し合いの土俵に引き込むことが必要であり、経済的にみて交渉に応じたほうが得だと相手に思わせることである。双方が得をするような交渉術(Win-Win negotiation)を念頭に、交渉を進める。

③相手の人柄を見抜くこと
債権回収交渉は人格と人格のぶつかり合いであり、相手の人柄、誠実さを素早く見抜き、金融機関側の意向を正しく認識させることが必要である。安易に相手を信じ込まないことも大切で、交渉は心理戦でもある。

④ギリギリの妥協点を探り、クロージングのタイミングを計ること
担保や有力保証でカバーされていない限り、債権回収が一〇〇%満足を得る機会は少ない。ギリギリの妥協点を探り、ここでまとめたほうが得だと判断したときは、タイミングを失することなくクロージングに持ち込むべきである。やたらと交渉を長引かせることは得策ではない。

⑤面談は基本的にペアで行うこと
相手の主張をじっくりと聞き、交渉過程の微妙なニュアンスを把握するためには、面談は原則としてペアで行う。