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DIPファイナンス

新たな融資分野として注目を浴びているが、融資リスクも大きい

金融機関の新しい融資分野として「DIPファイナンス」が注目されている。DIPとは占有継続債務者(debtor in possession)を意味し、経営者が経営権を維持しながら法の監督下で企業の再建にあたる米国連邦破産法の概念であり、DIPファイナンスもそのようなDIP企業に対する支援融資を指すものである。しかし日本では、法的再建企業等に限らず、広く過剰債務で経営不振に陥った企業に対する再建支援融資をDIPファイナンスと称している。

DIPファイナンスの目的は、経営不振企業であってもキャッシュフローを生み出す事業がある場合に、その事業をベースにして企業再建のチャンスを与えることにある。このような企業が再建を果たすためには、法的または私的再建手続の申立て後、再建計画が決定されるまでの間の運転資金やリストラ資金、計画決定後の設備投資資金、さらには再建計画を早期に終了させるための債務返済資金(出口融資:Exit Finance)などの資金調達が必要になり、その各段階に応じてDIPファイナンスの需要が発生する。法的、私的手続を問わず、DIPファイナンスは他の債務に優先して返済を受ける共益債権的位置づけにあり、それだけ信用リスクは軽減されている。

しかし、企業の再建が不首尾に終わることもあり回収懸念は残るので、リスクに見合った金利をとることが原則である。この種のファイナンスに応ずる金融機関は、以前は既往取引におけるメインバンク等が主体であったが、最近は従来の取引関係に関係なく、このようなリスクマネーを供与する金融機関が増えている。DIPファイナンスの取上げ判断のポイントは、事業再生の確実性、当面の資金繰計画、回収(Exit)の方向性、債権保全の十分性(共益債権化が前提)、適切な債務者情報開示の確保、経営者や株主の責任の明確化等である。

再建手続申立て後、計画が決定されるまでの間のファイナンスは、緊急避難的性格が強くリスクが大きいので、特に慎重な判断が求められる。メインバンクであった金融機関が行き掛かり上この種のファイナンスに応ずることもあるが、当該融資先には、一方で債権放棄等の金融支援による損失負担を余儀なくされることが多く、そこに追貸しをして二次損失を発生させるような事態は回避すべきであって、単に裁判所が共益債権として認めていることを頼りに融資に応ずることは不適切である。やむをえず融資に応ずるにしても、それが金融機関にとって経済的合理性に適うという「大義名分」が必要であろう。